ウクライナ侵攻、ロシアはどこまで〈悪〉なのか【佐藤健志】
佐藤健志の「令和の真相」41
◆反ロシアの情報戦にまで合意
そうです。
NATOの正式な一員でこそないものの、2020年6月いらい、ウクライナは「高次機会パートナー」として、いわば準会員に迎えられているのです。
ウクライナのマルチメディア・プラットフォーム「UKRINFORM」によれば、これによって可能になる事柄は以下の通り。
(1)NATOの作戦立案参加
(2)集団安全保障を含む全てのNATOの訓練へのアクセス
(3)前線での経験、部隊・機器の優先的認証へのアクセス
(4)NATO本部・指揮機構でのポスト就任
(5)NATO加盟国とのインテリジェンス(注:情報)の深化した迅速な交換
(6)黒海海上での安全維持協力の強化
(7)サイバー脅威、国際テロ、組織犯罪への共同対処
駄目押しと言うべきか、憲章の第3節第4項にはこうある。
【アメリカとウクライナは、ウクライナの歴史が広範に周知されるよう、今後も密接に協力することをめざす。これには1932年から1933年にかけて生じたホロドモールをはじめ、過去にウクライナの内部で生じた残虐行為、および過去に外部からウクライナに加えられた残虐行為をめぐる人々の関心を高めることが含まれる】
ホロドモールとは、ヨシフ・スターリン政権下のソ連各地で起きた大飢饉のこと。
ウクライナ(当時、同国はソ連の一部でした)の被害がとくに甚大だったのですが、じつはこれ、スターリンが意図的に引き起こしたか、少なくとも積極的に対処しようとしなかったことによる人災と言われます。
要するにアメリカとウクライナで、反ロシアの情報戦、ないし「歴史戦」をやると宣言しているのですぞ。
「平和に暮らしていたウクライナに、悪いロシアがいきなり攻め込んできた」という図式が成り立たないのは、もはや明らかでしょう。
──ウクライナを使ってNATOの東方拡大をもくろみ、ロシアを追い詰めようと画策したアメリカ(およびEU)こそ真の問題だ!
そんなふうに叫びたくなる人も出てくるかも知れません。
ところがお立ち会い。
そうとも言えないのです。
この先は次回、お話ししましょう。
文:佐藤健志
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【佐藤健志氏によるオンライン読書会のお知らせ】
ウクライナ侵攻と関連して、Zoomによるオンライン読書会を下記の通り開催します。
「強兵なくして主権なし〜ロシアの視点を理解して、日本が取るべき戦略をつかめ」
◆開催日時:2022年6月18日(土)14:00〜16:00
講義 14:00〜15:30
Q&A 15:40〜16:00
※質問多数の場合、Q&Aコーナーの時間を延長します。また参加者全員に録画アーカイブを配信しますので、リアルタイムでご参加いただけない方も安心してお申し込み下さい。
解説書籍:『「帝国」ロシアの地政学』(小泉悠、東京堂出版、2019年)
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